ANNO: MutationemにSCPは登場しない…"公式には"
サイバーパンクアクションアドベンチャー『ANNO: Mutationem』
この作品は大きな期待と注目を集めている。
ゲームとして面白そう、グラフィックが綺麗、そしてSCPが登場する…
……はずだった。
本作を未だに「SCPが出てくるゲーム」と認識されている人も多いだろう。
もちろんそういう触れ込みで話題になったし、事実として「例の巨大爬虫類」*1は上の最新PVにも登場している。
しかしながら、本作には「SCPは登場しない」
開発元であるThinkingStarsは 今年6月に行われた配信で
" 公式にはSCP 登場するという風にはしなくなりました。
ちょっと諸々、諸事情でですね。”
と明言した。
これについて、自分の中で少し思う所があったので 軽く考察したい。
もしかしたら今から書くことは ものすごく的外れかもしれないが、それでも今モヤっとしている部分を皆さんと共有しておきたい。それと、この記事は開発元に抗議するものではない。
過去にSCP"風"のゲームがリリースされたことはあるが、本作は商業作品としては珍しく初期の頃からSCPを登場させ、明言・明記していた。しかし年月が経つとSCPの表記を消してしまい、そのことについても積極的に語ろうとしなくなった。
そして今年の6月、以下の通り「SCPが公式には登場しない」ことを明言。
まず、配信で言っていた"諸事情"の部分、これはおそらくCC BY-SA 3.0のことではないかと思われる。
SCPについて軽く説明 / CC BY-SA 3.0 とは
SCP財団(SCP Foundation)は、超常的な力を持つ存在・物品・場所を扱う架空の秘密結社 および それについて創作を行うコミュニティサイト。
日本版: http://scp-jp.wikidot.com/
初心者は とりあえず これを読め: SCP-173 - SCP財団
設定としては、"一般市民が異常な存在に触れ集団パニックを起こすもしくは壊滅的被害をもたらすのを防ぐため、異常な存在を極秘に収容する" というもの。
ユーザーは主に報告書(オブジェクトの特徴、収容方法、過去に起きた事件・事故、過去に試した実験などがまとめられている)を執筆・閲覧し楽しむ。
そしてこれらの作品は一部を除き、"クリエイティブコモンズ 表示-継承3.0ライセンス"(CC BY-SA 3.0)に従うことで自由にコピー・改変・商業利用ができるのだ。
この自由さのおかげでコミュニティは大量のファンメイド作品で溢れている。
しかし注意すべきなのは、SCPを引用した作品には必ず「SCP財団から引用したことを表すクレジット」を表記し「CC BY-SA 3.0」も継承しなければいけないこと。また、これ以上の制約を設けてもいけない。*3
例えば、誰かが時間とお金をかけてSCPを使った作品を完成させたとしても、その作品は第三者によって自由にコピー・改変・商業利用されてしまう。
つまり、SCPは非常に魅力的だが ビジネスとしては美味しくないのだ。
開発元がSCPの表記をやめたのは、おそらくこれが要因だろう。
ThinkingStars は 規約についてどれぐらい理解していたのか?
開発元のThinkingStarsは SCPの世界観を採用するにあたって、SCP財団を利用するための規約についてどれぐらい理解できていたのか非常に気になる。
彼らは前述の規約 CC BY-SA 3.0 について何も知らなかったのだろうか?
ディレクターの小山氏は過去のインタビューで、
"SCPっていう,一種の創作ウェブサイトがあるんですが,特徴がオープンソースであることなんです。なので,世界中の人がコンテンツを創作したり,それを使って二次創作したりといったことができます。"*4
と答えていることから まったくの無知ということではないだろう。
仮に「規約について把握しておらず、完成が近づいてきた頃に把握し、表記をやめた」とする。
しかし、それは会社として無責任としか言いようがない。規約も確認せず、とりあえず使用して、最悪使えなくなるかもしれないドット絵をせっせこ打っていたと考えると、あまりにも杜撰すぎる。現実味がない。
逆に「規約については最初もしくは開発初期から把握していた」と考えた場合、さらなる疑問がわいてくる。
"なぜ開発元のThinkingStarsは、ANNO:Mutationemに 後々商業的には足枷となるSCPを登場させ、それを明記したのか?"
SCPは宣伝のため、興味を引くための飾り?
結果だけを見ると開発元のやったことは宣伝効果を期待した話題作りに思える。
開発元は、規約を把握し「SCPを使うと、商業として破綻する」という考えにいきついたはずだ。にも関わらず イベントなどに出展した初期のデモ版には SCP-682 が登場しており、SCP財団ロゴの表記まであった。
最終的にSCP関連のキャラや設定を登場させなくする・ガワや設定は流用して表記だけ取り消す ことを前提としていたかどうかは定かではない。
が、実際 SCPを登場させたことで反響はあったわけで。
「公式には登場しない」は卑怯か?途中でやめてもパロディの範疇か?
最終的に、ANNOにSCPは登場しないことになった。しかし前述の通り 例の爬虫類はPVにばっちり映っている。「公式には」登場しないのだ。
あくまでもSCP-682に似たオリジナルキャラクターとしてプレイヤーの前に立ちはだかるのだろう。そうすれば財団職員を満足させつつ、利益を上げることができるというわけだ。
最初は「そのもの」と言っていたキャラクターを後に「パロディ」に変えるのは アリか ナシか…………不毛かもしれない。
あとこれは私見だが、ANNO: Mutationemのゴリゴリにサイバーパンクな世界観に SCP財団を混ぜるのは かなり意欲的・革新的のように思える。よりハッキリ言うなら「SCP必要か?」と。
PVを見ても メカメカしい敵とばかり戦っていてSCPの必要性が感じられない(もしかしたら異常性を持った機械系オブジェクトなのかもしれない)
だからと言ってSCPを出すなというわけではないが。
再度断っておくと、これで開発元に抗議しようというわけではない。
しかし、やはり私にはSCPを採用したことが最初から最後まで解せないのだ。
『ANNO: Mutationem』は2020年12月にPS4/PCで発売予定。
20/09/27 追記: 東京ゲームショー2020にて 興味深い配信があった。
数秒ではあるが、再び「SCP」という単語が表れた。
これは意図的なものだろうか…? それともSCPの部分を消し忘れたミスだろうか?