非ゲーマーのための東京探訪ゲーム "Ghostwire:Tokyo" 【ゲーム雑記】
Ghostwire:Tokyoは私がここ数年で最も期待していた作品であり、最も評価の難しい作品だ。
注意: 本記事には"Ghostwire:Tokyo"のネタバレが含まれます。
私はこのゲームが好きだが、万人にオススメできるかと言えばそうとは言い難い。
本作には多くの良い点と共にそれと同じくらい多くの悪い点も含まれている。
ゲーム内で撮影した東京観光写真(スクリーンショット)と共にそれらを語ろう。
- <大まかなストーリー>
- <舞台設計は最高峰>
- <中二心をくすぐる世界観と演出>
- <膨大なデータベース>
- <アクションの難易度はかなり低め>
- <前時代的ゲームプレイ>
- <ボリューム不足なストーリー>
- <最後に>
<大まかなストーリー>
突如として渋谷から全ての人間が消失し、マレビトと呼ばれる不気味な存在が街を占領。
主人公"暁人"は事故で死にかけるも 身体の中に謎の人物"KK"が侵入したことで蘇る。
暁人は連れ去られた妹を助けるため、KKはテロリスト"般若"を倒すためお互い協力することに……
<舞台設計は最高峰>
Ghostwire:Tokyoの一番のウリは間違いなく"日本の街並み"だろう。
ゲームは渋谷スクランブル交差点から始まり、幽玄坂(たぶん道玄坂)や宴三町(たぶん円山町)といったネオン看板がきらめく夜の街"東京"がプレイヤーを歓迎する。
看板や商品は現実のものに似せて作られており、日本に住んでいる人にはかなり刺さる
内容となっている。しばらくの間は看板や貼り紙を読むだけで時間をつぶすことができるだろう。
日本の街並みを再現するという点では本作は間違いなく最高峰のものだろう。
駅のホーム と 散らかったゴミ、
駐車場 や 駐輪場、
しっかり読める貼り紙 や なぜか入れるコインランドリー、
細かい部分を見てもかなり気合の入った作り込みようで、貼り紙や時刻表などほとんどのものが近づいて文字が読めるようにできていたのは驚き。
また消失してしまった人たちがどんな最後を迎えたのか、街中に残された衣服から読み取ることができるのも面白い。
落ちているスマホには緊迫したメッセージが残されていることもあり「今起きていることを理解できず漠然とした不安に駆られている」民間人の心象がよく表れている。
このようにGhostwire:Tokyoの魅力はウォーキングシミュレーター的側面が大きい。
<中二心をくすぐる世界観と演出>
"最高の街"を補強するのは"最高の世界観と演出"だ。
霊能力を持つ人々、霊について研究するアジト、魂を転送できる公衆電話。
プレイ開始からしばらくはそのオカルト増々のアニメのような世界観に圧倒されるだろう。
本作にはオバケや妖怪など怖い敵が多数出てくるが、決してホラーゲームではない。
都市伝説から生まれた異界の存在を霊能力を駆使して退治するという中二心くすぐるアクションゲームなのだ。
口裂け女と正面切って戦えるのはGhostwire:Tokyoぐらいではないだろうか。
ゲームシステムには"地蔵を拝む"、"鳥居を浄化する"、"数珠を装備する"、"賽銭で助けを乞う"など、日本ならではの要素が上手に反映されている。
そして探索や戦闘においては奇天烈なエフェクト表現が目立つ。
特に探索中は壁に不気味な紋様が浮かび上がったり、突然全く様相の違う部屋に移動したり、周囲にある物が変形したりと
プレイヤーを飽きさせない仕掛けが次々と出てくる。
戦闘においても主人公や敵の攻撃のエフェクトがきらびやかで、周囲に浮かび上がる漢字がカッコいいのはもちろんのことだが、
中ボスクラスのマレビトが周囲に与える異常な影響は特にしびれるので必見。
このような日本人の間で培われてきたオカルト世界観と独特な表現方法が本作をビジュアル面でより個性的なものにしたと言える。
<膨大なデータベース>
また、プレイして驚きだったのが膨大な日本文化データベースだ。
ゲーム中は"おにぎり"などの食べ物や、猫又に渡す収集品など様々なアイテムが存在しておりそれをゲットする度にデータベースが追加されるのだが、そこには日本人には馴染み深いものから意外と知らなかったあんなものまで大昔から現代に至るまでの日本文化が大量にまとめられているのだ。
招き猫や達磨といったポピュラーなものから、エリマキトカゲやルーズソックスなどの流行り物まで網羅しているので、ある程度年のいった日本人にはたまらないだろうし海外の日本好きには貴重な資料図鑑にもなるのではないだろうか。
<アクションの難易度はかなり低め>
では次にGhostwire:tokyoの気になった点をいくつかあげていこう。
まず本作はアクション、FPSゲームとしての難易度がかなり低い。
私は本作を難易度ノーマルでプレイしたが一度もゲームオーバーにはならなかった。そしてクリアしてから他人のプレイを見たり、感想を教えてもらったりしたが やはりゲームオーバーになった人はほとんどいなかった。
というのも本作のアクションはかなりプレイヤーに優しくできていて、敵の攻撃のほとんどはテキトーに歩いてるだけで避けられるし、攻撃をくらったとしてもすぐに食べ物で回復できるのでなかなか死なない。しかも食べ物で回復する度に体力最大値が上昇するのでレベルアップと合わせて体力がどんどん増えていき、ますます死ななくなる。ハッキリ言って、緊張感がない。
弾薬管理もかなり楽で弾薬が尽きて追い込まれる瞬間はなかったし、コントローラーで遊ぶとエイムアシストもついている。
攻略を助けてくれる強力なアイテム"御札"も用意されているが、私はほとんど使わなかった…というより使わなくても何とかなってしまうのだ。
このように戦闘は難しくないのだが、地味に敵が硬くそして種類が少ないことで単調な戦闘が長引いてしまっており、人によっては早い段階で戦闘に飽きてしまう。
結局のところ"緊張感はないがある程度時間はかかる戦闘"を何度も強いられた印象は否めない。簡単であることは非ゲーマーを取り込むという点では正解だったのかもしれないが、ゲーマーにとってはかなりの不満点になってしまった。
<前時代的ゲームプレイ>
渋谷を探索していると様々なサブミッションに遭遇する。
妖怪を捕獲したり、幽霊の成仏を手伝ったりするわけだが ミッションのクオリティにはかなり波があるように感じた。
作り込まれたマップを探索して問題を解決していくしっかりしたものもあれば、ただザコ敵を倒すだけあるいは少し走り回されるだけのおつかいクエストもある。
その中でも妖怪の捕獲はかなりつまらない部類と言える。一反木綿や鎌鼬などをただひたすら追いかけるだけの何の捻りもない単調な作業になっている。
それならそれでもう少し妖怪の種類を増やしてほしかったと残念に思うばかりだ。
またどのサブミッションも「助けて~」と困ってる幽霊に話しかける形で始まり、ミッションクリアと同時に周囲に幽霊(事実上のお金・経験値)が報酬として出現するのには 悪い意味で一昔前のゲームっぽさを感じた。
そして渋谷に散らばった幽霊たち約24万人を形代で助けるシステムは パルクールのご褒美や経験値としては美味しいのだが収集要素として面白いかと言えばかなり微妙だった。救出には時間もかかるし序盤は制限が多い、全員を救出してもエンディングには影響がないし、手に入るのは弾薬無限・隠密強化のチート装備……これも一昔前っぽい。
終始、”豪華なグラフィックとは対象的に前時代的な遊びを繰り返している”ように感じざるを得なかった。
<ボリューム不足なストーリー>
では肝心のメインストーリーはどうだったか?……残念ながらこれも消化不良に感じてしまった。
まず本作の登場人物はどれも謎が多く、掴みどころがない。
本編開始時点で渋谷から人は消え去っており、メインキャラの多くも死滅しているため小出しの情報から断片的にしか内情を察することができず、キャラクターに感情移入するのが難しくなってしまっている。
この人はどんな過去を持っているのか?この人とはどういう関係なのか?今、何を思っているのか?
どれも曖昧で、ムービーシーン、普段の会話、収集物から読み取れるのは"それっぽい雰囲気"のみ。
例えば相棒のKKは"反抗的で、腕っぷしが強く、しかし新しいものには疎いイケおじ"というそれっぽいキャラをしているが、本編で具体的に彼の過去が明らかになったり、より踏み込んだキャラクター描写が入ることはない。
かつては家族がいて、しかしすれ違いから離れてしまったことがふんわりと読み取れる程度。
この"それっぽい雰囲気"を維持したままストーリーは駆け足で進んでいく。
突然出てきたキャラクターの内情にいきなり入り込んだり、「こんな事情があったんだね~」と雰囲気だけを感じ取る。
そして思い入れのないままキャラクターが死んでいく。
良く言えば「考察の余地がある」のかもしれないが、スカスカで空っぽな物語にも見えた。もう少しハッキリした背景やキャラクター像があれば もっとGhostwire:tokyoの世界を好きになれたはずだ。
<最後に>
2019年のE3で発表されてからコロナ禍の中で発売延期やメインクリエイターだった中村育美氏が開発元を退社するなど紆余曲折を経て2022年3月末に発売された本作だが、開発側は本作の出来に満足しているのだろうか?
クリエイターが途中で抜けたことによる影響はどれほどのものだったのかプレイヤー側から察するのは難しいが、開発初期と完成時では開発環境が異なっているはずだ。それ故に「開発側は本作の出来に満足しているのか」と色眼鏡をつけて見てしまうのだ。
もちろんそれでGhostwire:Tokyoを「いろいろあったし仕方ないよね」と甘い目で評価するつもりはないが、モヤモヤとした感情を残してしまっているのは確かだ。
あらためて私はこのゲームが好きだが、万人にオススメできるかと言えばそうとは言い難い。
あなたがこのゲームにアクションFPSとしての奥深さ、キャラクターが織り成す物語や、とびっきり恐ろしいホラー要素を求めているのであれば 大いに期待外れとなるだろう(最後のに関してはお門違いとも言える)
簡潔に言い表せば、
"世界観と演出とグラフィックに全振りした結果、肝心の遊びやボリュームが大きく削られてしまった" 良くも悪くも和ゲーらしい作品、それがGhostwire:Tokyoだ。
でも好きなんだからしょうがない。